一色登希彦/ブログ 

一色登希彦 ブログ / 三重県の小さな町に在住 現在は飲食店に従事 漫画描いてました

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「漫画家のなり方」21

第6章 技術論としてのおすすめ文献 10プラス1


このような文献を10ほどご紹介。

漫画家志望の方が、ずいぶんと自分の才能に自信を持っているらしいことと関係があるのかどうか、みなさん、あまり、「漫画の描き方」を調べたり、突き詰めたり、人に聞いたりしないように見えます。



インターネットももちろんですが、本をはじめ、様々なことから「創作」については学んでおかなければ、今この世界にあるもの以上のものは作り出せません。

既存の何かに批評的であるならば、その批評対象の詳しいところを知らなければなりません。
今ある漫画や、漫画の技法に文句を言うならば、それらを熟知しなければなりません。
「型破り」は、まず「型」を知らなければ出来ません。

「漫画の描き方」的な文献は、少し前にくらべると、大変多くの数が世に出ています。
これから下記に挙げるもの以外にも、有用なものはありますし、また同時に、読んでも読まなくてもいいようなレベルのものも、それ以上にたくさんあります。
以下に列挙する参考文献は、自分が目を通した文献の中で、最上の有用性があると考えるものです。

漫画家さんが書かれたものがあり、小説家、シナリオライター、映像演出家、色々なジャンルの方が、そのジャンルのために書かれた技法書であったりしますが、すべて、漫画を創ることに応用がきくものです。

全部買いそろえても、1万円とちょっとの金額です。
中に書かれているノウハウが、本当に身に付くのなら、なんと安価な出費なのでしょう。

本は素晴らしい!

それぞれの文献を紹介し、あわせて、その文献をおすすめする理由を添えます。

他にも、おすすめしたい、あるいはおすすめ出来る文献は、多くあります。
ただ、これ以上挙げても、内容や主旨が同じようなものがかぶってきます。
それぞれの文献は、その文献が属するテリトリーのようなものから「代表」のようにピックアップしたものです。

文献は、数にして10ほど挙げています。
つまり、10ほどの、「技術論のテリトリー」のようなものを仮定して、その中から選んでいるので、さらにもっと読みたい、深く知りたい、とお考えになれば、そのテリトリーを深く探って、同種の文献をひもといて行くことはできるはずです。
具体的には、大きな本屋さんで、図書館で、あるいはアマゾン等のネット検索の「この本を買った人はこんな本も調べています」的な類似検索で、挙げた本の近隣にある本を手にすれば良いことです。
また、その時に、ここに挙げた文献の「本物度合い」を理解して下さっていれば、類似の本を手にするときの価値判断の基準は出来あがっているはずです。
あとは自分の好みと見る目で、自分の為になる文献を見つけることが出来るはずです。
役に立たないものを選別する目も備わるはずです。
そのようにして、生きた自分の漫画の技術を身につけて下さい。

文献の紹介に添付した各データは、入手の一助となればという限りの目的で添えていて、かなり適当なネット上からのコピペ等を元にしていますので、細かい部分で不正確が多々ある可能性があります。ご承知置き下さい。



1 「マンガの創り方 誰も教えなかったプロのストーリーづくり」



著者/山本おさむ
出版/双葉社
定価/3,990円 (本体 3,800円)
ISBN 978-4-575-30057-4

アマゾンだとすでに値の上がったリセール品しか無い瞬間があるようです。
探し方次第では、最近まで、新本を入手出来たと記憶しますが・・・

漫画家の山本おさむさんが書かれた本です。
どうでもいいけど、「山本」さんというお名前の方の「優れた漫画家率」、なんだか高くないですか?

現役の漫画家さんが文章で論理化した漫画演出技法書としては、筆頭に挙げたい本です。
ご自身が、おそらくはご自分の為に、漫画以外の様々なジャンルから「物語」の演出技法を学び、身につけたプロセスを明かして下さっています。
それをさらに言語化して、漫画家志望者やさらに現役の漫画家さんのスキルアップにも耐える論理を積み上げています。
たいへんページ数のある、ボリュームのある本です。読みごたえがあります。




2 「石ノ森章太郎のマンガ家入門」


著者/石ノ森章太郎
出版/秋田書店
定価/590円
ISBN-10: 4253172504
ISBN-13: 978-4253172509

なんと安価な!

前項で「現役の漫画家さんの代表作筆頭」を挙げましたが、こちらは「故人」あるいは「クラシック」と言うべき著作の筆頭に挙げたい本です。
「クラシック」筆頭ならば、手塚治虫さんの漫画入門ももちろん候補に考えられます。


石ノ森章太郎さんの著作を挙げたのは、自分の趣味のレベルの選択です。

ただ、いくつか、「こちら」を選択した理由は述べられます。
この、石ノ森章太郎さんの著作は、ご自身の漫画家キャリアが大変浅い時代に書かれたもののようで、その点に驚きます。
また、技法書として、現在でも充分に通用する内容を持っていることももちろんなのですが、本論ですでに述べた、
「よほどの特別な覚悟がないと、プロの漫画家になることはおすすめしない」
という主旨は、実は石ノ森章太郎さんがこの本で述べていらっしゃることです。

自分だけの空想の世界、自分が王様でいられる世界を、他人に明け渡すことの喜びと恐怖。

その点に関して、明確に、読者つまり漫画家志望者に覚悟を求めています。

漫画家になること、漫画家であることに関して、手塚治虫さんとはまた別の、深い「業」を感じます。
生半可に漫画家を目指さないで欲しい。
漫画家であることに命懸けであって欲しい。
石ノ森章太郎さんのそうした思いが、この本からもにじみ出ているのです。

本全体から、漫画家になりたいと考え始めてしまった人に向けての、祈りに近い思いが強く感じられます。




3 「快描教室 マンガの悩みを一刀両断!!」ほか 菅野 博士(菅野 博之)さんの漫画技術関係の著作

著者/菅野 博士
出版社/美術出版社
定 価/1470円
発売日/1999/10/15
ISBN-10: 4568501938
ISBN-13: 978-4568501933




山本おさむさんが、現役の漫画家さんの「理論」書の筆頭だとして、言い比べるなら、こちらの菅野 博士(菅野 博之)さんの著作は、「技法」書の筆頭であると言えば良いでしょうか?
あるいは山本おさむさんが「アタマにインストールする理論」であるのに対して、菅野博士さんは「目と手にしみ込ませる技法」でしょうか?
まあ。あえてふたつを言い分けるなら、という程度のものですが。

菅野さんの技法書は、理論と、ビジュアル面からのアプローチの、両面の融合のようなたたずまいです。
漫画の技法の分析という点において、これは「大発見」「大発明」だと自分は思っているものがあります。
おそらく菅野さんが名付けたであろう、「視線誘導」という、漫画のコマ割りの分析と構築の理論は、たいへん画期的です。
もちろん、「視線誘導」と名付けられたその技術は、漫画家さんはそれぞれ身に付けている技術です。
そして過去の技術書においても、同じことは書かれていないわけでは無かったのですが、菅野さんが卓越している点は、その「技術」に名前を付けて、比類のないくらいに分析し、体系立てた点です。

手前味噌になりますが、実は、まったく同じ発想の同じ理論体系を、自分も10数年前に「発見」しました。
それを「発見」した時は、「こんなことをしゃべったら殺される」と思いました。本気で。
それくらい、漫画の秘密、それぞれの漫画家さんの、創作のリズムのようなものがわかってしまう分析の仕方が、身に付いてしまったのです。
残念ながら、「視線誘導」などというナイスなネーミングを一緒に思いつくことが出来なかったので、自分の「発見」は、自分と、自分の周囲の限られた人にしか役に立つことはありませんでした。
「しゃべったら殺される」レベルの、値千金の秘術が、菅野さんの技法書には満載です。

「コマ割り」、「レイアウト」といった、ビジュアル面からのアプローチでの技法は、菅野さんの著作数冊で、必要にして充分なものが身に付きます。

「レイアウト」という考え方に関しては、押井守さんがご自身の映画作品について技術解説をされている本がいくつか出ていて、理論としてとても参考になります。そちらも併せておすすめしたいです。





4 「ベストセラー小説の書き方」


著者/ディーン・R. クーンツ、Dean R. Koontz、 大出 健(訳)
出版社/朝日新聞社
定価/720円(本体価格)/756円(税込価格)
発売日/1996/07
ISBN-10: 4022611561
ISBN-13: 978-4022611567

小説家が書いた、「物語執筆技法」として、コンパクトで明瞭です。
タイトルに何らかのアレルギー反応を感じる方は、本当に商業作家になりたいと思っているのかの自問自答を含めて、リトマス試験紙的にモノを考える足がかりにも出来るはずです。




5 「書きたい!書けない!なぜだろう? 」(夢を語る技術シリーズ)


著者/マリサ デュバリ、Marisa D’Vari、別所 里織、 岡田 勲(訳)
出版社/ストーリーアーツ&サイエンス研究所
定価/1890円
発売日/2002/03
ISBN-10: 4750002437
ISBN-13: 978-4750002439

ハリウッド映画のノウハウの海から生まれ出てきた多くの技法書のひとつです。
基本的には、シナリオ執筆技法のようなものに属します。
ハリウッド産の技法書は、いくつか読んで行けば、だいたい、どのような主旨が存在するのかはわかってくるはずです。
自分に合う優れた技法書を見つけ、必要なものを必要なだけ身に付けて、自分のものにして下さい。
そして同時に、それだけに捕われないように気を付けることも忘れずに。

この本は、それとは別に、
「苦しいのはわかります。でも、いいから、大丈夫だから、とにかく頑張って作品の出来や評価は気にせずに、ひとまず書き上げましょう。話はそれから!」
という、作り手の苦しみへの共感と愛と、作り手への励ましが感じられて、ステキです。

タイトルの通りのことが書かれています。

漫画描きたい、漫画描けない、なぜだろう・・・と考えることがあったら、読んで下さい。




6「ファンタジーの文法 物語創作法入門」 (ちくま文庫)
著者/ジャンニ・ロダーリ 窪田 富男(訳)



出版社/筑摩書房 (1990/09)
定価/840円
発売日/1990/09
文庫/347ページ
ISBN-10: 4480024816
ISBN-13: 978-4480024817

2項前の「ベストセラー小説の書き方」が、「物語を作る作家であること」への愛が強く書かれているように思えるのに比べて、この本は、著者の、「物語を作ること」への愛、あるいは「物語」への愛そのものが強くあふれています。




7 「映像の原則 ビギナーからプロまでのコンテ主義」(キネ旬ムック) (単行本)


著者/富野 由悠季
出版社/キネマ旬報社 (2002/02)
定価/2000円
発売日/2002/02
単行本/329ページ
ISBN-10: 4873765803
ISBN-13: 978-4873765808

富野 由悠季さんのこの本は、もちろん「映画」「映像」の技法書です。技術的に参考になることが満載であるのと同時に、この方らしいですが、「とにかくモノを考えろ!」というメッセージが基本を貫いています。
書かれている主張の中に、仮に、「それはどうなの・・・?」と思うところがあるとしたら(あります)、ならばその時にはキミは、有効な持論、反論、代案を用意出来ていないとダメなのだ、プロとはそういうものだ、という著者の基本姿勢がブレません。

君は生き延びることが出来るか!?




8 宮崎駿さんの絵コンテ

「ポニョ」とか、カラーですさまじいですよ。
それぞれの作品の絵コンテが、徳間書店から入手出来ます。

もう「宮崎アニメ」を、ただ楽しんでいる場合ではありません。
それではいつまでたってもただの「受け手」のままです。

「宮崎アニメ」の絵コンテが入手できるということは、クリエイターになりたいのなら、当たり前と思ってはいけない幸運だと思うべきです。

漫画作品では、優れた作品を読んで影響を受けたり参考にしたりすることは出来ても、その漫画作品の生み出される途上のプロセスに触れることはあまりできません。
アシスタントに付いた先の漫画家さんから、そうしたことのカケラでも盗み見れるのなら、実はそれはものすごく幸運なことだと言うのは、えてしてあとから思い知るばかりです。

宮崎駿さんの絵コンテは、作品の演出意図も含めて、スタッフへの指示の仕方、自問自答の痕跡、そうしたことを読み取ることが出来ます。
「これがひとりの人間の手で描かれたものか・・・」と驚くと同時に、
「ならば自分はどうしよう・・・」というところに、意識を持って行けるとよいです。

同じく、宮崎駿さんの仕事の仕方を見ることが出来るという意味で貴重なものは、「もののけ姫」のメイキング映像、
「「もののけ姫」はこうして生まれた」があります。こちらもオススメします。


また、宮崎駿さんの絵コンテを参照するならば、対比して、例えばガイナックスやスタジオカラーの、庵野秀明さんはじめ多くのクリエイターさんの手になる絵コンテ集をご覧になることもおすすめします。
(・・・高いな。新本ないんすか?)


両者の、作品の作り方に対する考え方の対比は、それぞれ必要と必然から構築されたもので、それを知ること、類推することは、モノ作りのノウハウを構築して行く際の、貴重で巨大な先例です。




9 「新インナーゲーム 心で勝つ!集中の科学」


著者/W.ティモシー ガルウェイ、W.Timothy Gallway、 後藤 新弥
出版社/日刊スポーツ出版社 (2000/06)
定価/1365円
発売日/2000/06
単行本(ソフトカバー)/284ページ
ISBN-10: 4817202106
ISBN-13: 978-4817202109

スポーツ技法書。
スポーツにおけるメンタルコントロールの技法書です。
弱いココロやダメなココロが発生してそこにハマり続けるメカニズムをひもといてくれています。
漫画を描いていれば、どこかの段階で必ず、
「まいったな」
「やんなっちゃうな」
となります。そうした時に有用です。




      10 本論「漫画家のなり方」

著者/一色登希彦

インターネット上で無料で閲覧出来るという点において、唯一無比です。

冒頭に述べたように、狭義の技術論ではありませんが、現在において必須と考える、心構えとしての技術を列挙します。
ネットでタダで見れますので、どうぞお目通し下さい。
ただより高くつくモノはないかも知れませんが。


      11 あらゆる長編ストーリー漫画単行本の第1巻と長編ストーリー漫画作家の読み切り漫画の短編集

正しくは、「技法としての文献」ではありませんが、これも添えておきます。
長編漫画の第1巻、なかでもつまり第1話は、漫画家さんの試行錯誤のすべてを見て取れます。
同じく、そうした長編漫画を描かれている漫画家さんが描かれる短編漫画は、同じ作家のその長編漫画との対比が出来るという意味において、参考になります。
もちろん、短編をメインに描かれている漫画家さんの作品は言うに及ばず、なのですが、対比が可能ということで、長編をメインに描かれている方の短編、は、参考になります。
ひと昔前の時代には、今よりももう少し、長編を描かれている漫画家さんが、短編読み切りを描かれる機会が多く、それを集めて単行本にする、ということが多かったように感じます。
それが少なくなってしまったように見えるのは、残念なことです。


      12 文献を読んでいただくにあたって

ここにご紹介した参考文献を読まれて、漫画家になりたいと考えている方が、何も得る所を感じない、というならば、やはり漫画家になることはおすすめしません。
それは、まだ、「好き嫌い」でモノを見ている、ということです。

本論の振り出しに戻って下さい。
このままここから先を読んで下さって、実用的な意味で得るところはありません。

文献を自分のものにして行く時に、必ず意識していて欲しいことがあります。

多くは作家さんでもある、上に挙げた文献の作者の、作家としての作品を、知っていようといまいと、好きであろうとなかろうと、その作家、あるいは作品への「好き嫌い」を、ご紹介した文献の評価に結びつけないこと。

自分自身、挙げた参考文献の作者の、作家さんとしての作品を、すべて知っているわけでも、すべて好きなわけでもありません。
すべての文献は、著者の皆さんが「プロの言葉」で書かれ、述べられた真実が込められたものです。
それは、そして、「創り手になりたい人」に向けて、切実に書かれたものです。
同時に、文献の内容が語る「技術」のディテイルについて、自分の目から見ても、それぞれの作者さんの文献に、
「そこは違うな」
「それはもっと、こう言った方がいいな」
と、突っ込みドコロを見つけようと思えば、いくらでも見つけられます。
でも、そうした思いが芽生えたら、こうも考えてみるべきです。
「じゃあ、そういうお前自身は、どうなんだ?」
そう考えれば、究極的には、
「もう、人の揚げ足取りはいいから、漫画を描かねば」
と、なるはずです。

列挙した文献は、切実に語られたものであると感じられるかどうか、をチョイスの主観的基準のひとつとしました。

ご紹介している文献はすべて、作家さんの切実さを感じる上に、さらに、「この有用性は、自分も保証できる。保証してでも目を通して欲しい」と思えるものを、挙げています。
ですので有用性は保証します。

読んで下さって、好き嫌いとは別に、何も得る所がないというならば、この項の最初に書いたように、本論を読み進めていただいて、得る所もまた、何もありません。
その時点で、この文章を閉じて、自分の信じる漫画を描くか、漫画家になることを目指すのはやめてお家の外に遊びに出かけることをおすすめします。

本論も含めて、これら文献を「こんなもの読まなくても漫画家になれる」とお考えになる方は、そもそも、もう、今、漫画家になっているはずなのです。


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