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一色登希彦 ブログ / 三重県の小さな町に在住 現在は飲食店に従事 漫画描いてました

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「漫画家のなり方」11

第3章 制作費や原稿料や著作権や契約書のこと

本章も、自分が、漫画の状況について考えるところをアップすべく書きためていたものですが、このあたりもまたまた、佐藤秀峰さんがご自身のウェブサイトで、同じ主旨のよりいっそうリアルな話を描いて下さっています。
「漫画制作日記」ページの、2009/3/28の「漫画貧乏」から始まる文章他で、読むことが出来ます。ご覧下さい。

序論で申し上げたように、本来書きつづろうと考えていた順番を変更しました。
この第3章と前の第1章~第2章は、本来は、本論の最後に雑感のように書き記すつもりでしたが、考えるところと、必要があって、まず、最初にこの第1章~第3章を配しました。


   その1 原稿料は 漫画の制作費なのか?

      1 制作にかかるお金

紙とペンがあれば漫画は出来る・・・と、理想的なお話とは別に、商業ベースに耐える漫画作品を完成させるためには、お金がかかります。
漫画家自身が生活してゆけるだけの生活費(それを漫画家の人件費と言っても良いでしょう)や、画材代、仕事場の家賃、光熱費、スタッフさんの人件費、色々なことにお金がかかります。そのお金は、どこから捻出し、どこでまかなえばよいものなのでしょう?




現状、「描きおろし単行本」でない限り、漫画の新作は、雑誌掲載、雑誌連載を発表の場としています。
漫画雑誌が漫画家に新作を求めるという形である以上、そこが、漫画が初めて「制作」される瞬間、「制作」される場です。
「原稿料」と呼ばれるものは、漫画雑誌が漫画作品を雑誌掲載するにあたって払われるものです。
ですので、その原稿料が、漫画の制作費として足りる額であるべきですが、現実には原稿料では制作費をまかなえないことが多いです。


      2 原稿料とは? その他必要なお金のことも

漫画家自身も、しばしば、原稿料が何を意味するかに無自覚です。
あるいは、原稿料に関することに対して、概して無力です。
原稿料は、漫画の制作と、制作された漫画を一度雑誌に掲載するための対価、です。決して、モノとしての原稿そのものが原稿料支払い者に買い取られるわけでもなければ、雑誌に一度掲載する以上の何かの権限や利益を、原稿料支払い者つまり漫画雑誌の出版社に譲渡するものでもありません。

本項では蛇足になりますが、モノとしての漫画原稿は、もちろん著作権者、漫画家のものです。
漫画原稿と、漫画原稿に関する雑誌初回掲載以降のあらゆる権限は、本来的に、創作者著作者である漫画家(あるいは原作者等が存在すればその共同の著作者と共に)のものです。
ところが、なかなか、その考え方が普遍とはなりません。
原稿は、雑誌に掲載するため、あるいはそののちに単行本にするために必要、ということで、出版社にいっとき預けてあるだけのことです。
そうした時の管理責任やらで、昨今、いくつかの問題が発生しているわけですが、いずれにせよ、漫画原稿は漫画家のもの、著作物の権利は漫画家のもの、という認識を持ち直すことが必要な状況が、いくつもあります。

さて、原稿料だけでは、新作漫画の制作費全てをまかなうことが難しい場合が多いです。
連載作品を描いている多くの漫画家さんが、原稿料だけでは赤字になります。
といって、すでに以前の章で述べているように、原稿料を支払う側の漫画雑誌も、赤字です。
そう言う意味では、ここまでの章で述べたように、漫画雑誌だって、泣き言を言いたい苦しさはあるはずです。
そのようなわけで、すべての漫画家さんが、作品の制作費を黒字にできる額の原稿料を今すぐに手にすることは、難しいはずです。

そのために、漫画家さんは「単行本の印税」をはじめとして、「二次使用」で得られるお金で、ようやく制作の費用をカバーする、ということが多くあります。
しかし、通常、仮に連載が始まっても、印税を期待したい単行本の発行が保証されるわけではありません。

連載10回くらいになる前に、つまり単行本にできる長さになる前に打ち切られることなく、ある程度の人気があって、単行本の売り上げが認められれば、ようやく単行本になるかもしれません。
仮に、単行本になることなく、連載のみで終わってしまえば、かなり大きな額の赤字が残ります。
それは、漫画家にとって「挫折」となります。
ベテランの漫画家であっても、そうした危機と常に背中合わせです。
まして、初の連載を始めた新人さんが、この赤字に見舞われたら、気持ちを持ち直すには、相当なエネルギーが必要なはずです。
もっと言えば、立ち直れなくなりかねないダメージをくらう可能性が高いです。

経験的に、週刊誌に連載開始して、単行本が発売されて印税を手にするまで、漫画製作の経営を維持し続けるには、連載開始の原稿を描き始める時に、最低100万円~200万円のお金を持っていることが必要です。
この先、漫画家になって連載を手にしてやろうと考えているならば、まず、100万円以上の貯金をすることです。

100万円からのお金が、どのように必須なのでしょうか。

仮に漫画家志望者が、この瞬間に、漫画雑誌に連載が決定したとします。
原稿を描きためる期間をとってもらったとします。描きための期間は必要ですし。例えば第1話の掲載が、今から2ヶ月後に発売の雑誌だったとします。それまでに、可能な限り、作品を描きためたいと考えるとします。
すぐでなくても、アシスタントさんに来てもらう必要があります。連載のペースで漫画を描くと、2人のお手伝いは欲しいところです。

アシスタントさんに直接的にお渡しする報酬は、時給、日払い、月ぎめ、色々ですが、ひとりに対して、月額最低十数万円、くらいです。
アシスタントさんの食費交通費、画材代、漫画家自身の生活費、おそらく住まいと一緒であるはずの仕事場所の家賃光熱費。

どれだけ抑えても、支出が月額50万円を下回ることは難しいです。
1話20ページスケールの週刊連載のレギュラー執筆で、月50万円以下の支出に抑えることが出来ている方がいたら、かなり驚きます。
試算は、2人のお手伝い、としましたが、2人では相当厳しいです。
3人のお手伝いは欲しいところです。
そうすれば、もう、ひと月の支出は70~80万円は、かかります。
ものすごく大雑把ですみませんが、そのようにして、月に50万円以上~100万円くらいまでの額がかかるはずです。

仮に雑誌掲載まで2ヶ月かかるとします。
「原稿料」というものが入金されるのは、掲載雑誌の発売から、早くて半月、もしかしたら1ヶ月後、くらいです。

そこまでの間、自分のお金でつないでいかなければいけません。
約3ヶ月。それは、最低でも3ヶ月、と考えて下さい。
月50万円以上~100万円くらい×3ヶ月
つまり、3ヶ月では、
150万円以上~300万円くらいのお金が必要です。
そこまでもてばラッキーです。

そのころ、3ヶ月目くらいに、1ページあたりいくらの、原稿料がようやくはいります。
仮に、新人さんでキャリアもなくて、という漫画家さんで、1ページ1万円だとしましょう。
1話20ページの週刊連載で月に80万(所得税の源泉徴収をされれば、72万円です)。
そこからの毎月の1ヶ月の出費を、上のような原稿料以下に抑えることが出来れば、どうにか回してゆくことが出来ます。

しかし、決して何かに贅沢をするわけでもなく連載の日々を過ごしても、ひと月の出費は、入る原稿料くらいの出費にはなります。
だれも、お金勘定の心配はしてくれません。
面白いネーム、面白い原稿を描かねばならない時に、ギリギリの収入と支出の心配もしなければなりません。
スタッフさんにお渡しする報酬だけは、絶対におろそかにできません。

自分は、その、漫画家キャリア最初の頃、瞬間的にお金が続くかどうかの綱渡りの緊張感のあまり、仕事が上がって帰って行くスタッフさんを見送ったとたん、胃けいれんみたいなことになって、倒れて半日動けなくなってしまったことがありました。

その、ギリギリのところのお金の勘定をしながら、人気を確保して、打ち切られることなく連載が続けば、今度は単行本の発売を待つことになります。

単行本は、連載が続いて作品のページ数がたまって、通常は連載の開始から、数ヶ月後くらいが第1巻の発売です。単行本の印税が入るのは、そこからまた数週間ののち、です。
印税が入れば、本当に、ほんのひと息、つけるかも知れません。

連載開始までに、100万円からのお金を持っていないと、連載は不可能、という図式はご理解いただけたと思います。

実際には、漫画編集部によってその都度違うので確証をもって保証は出来ませんが、連載が決定した作家さんには、編集部が「支度金」や「企画料」のような名目のお金を出してくれたり、原稿料の前借りをさせてくれたり、ということで、なんとかお金が回るまでの、当面のお金の問題に対応してくれる場合もあります。

何も用意してくれ得ないよりは、はるかにマシかもしれませんが、であるとしても、そうしたお金は、借金であったり、その場しのぎのよくわからん名目のお金であったりするので、厳密に、
「原稿料だけで制作費がまかなえる」というものではありません。


この話は、多くの新人漫画家さんに、ほとんど例外なく逃れられない共通のことだと思います。

理解し、どうやってサバイブするか、知恵の限りを尽くすしかないのです。

お金、何とかして貯めてください。

追記
このエントリーの冒頭にも書きましたが、ここでとりあげた原稿料その他に関することは、佐藤秀峰さんが、自身のサイトで、これ以上無いくらいに具体的に詳細に書いて下さっています。
ここから始まる、「漫画貧乏」シリーズ、ご覧になってください。

自分も、それを受けて、さらに本項を詳細に書き足そうかと考えもしましたが、雷句誠さんの原稿紛失事件の時にそうだったように、「ならば自分も、自分も」と人の勢いを借りるようになってしまうのもよろしくないので、本文はこのままにしておきます。

ただ、佐藤さんが示してくださった、連載デビューの際の原稿料、そして現在手にされている原稿料の数字は、現在の漫画の原稿料として、きわめて一般的な数字として考えて良い、と言っておきます。
つまり、これから漫画家になろうという方に、とても具体的な指標になります。
佐藤さんの出して下さっている数字を参考に、経営のシミュレーションをしてみて、間違いは無いです。
さすがにそれ以上べらぼうに安くもならないし、といって、佐藤さんが手にしている以上の原稿料をもらっている作家さんもそう多くはないです。
ここまでに述べたように、どのみち出版社がそれ以上の原稿料をそうそう出しようがないからです。

雑誌は、1号に充てられる予算が決まっている以上、新人ベテラン混在した多くの漫画家さんに払える原稿料の総額は、動かしようがありません。
そこを、ひとりの漫画家さんが交渉して原稿料のアップを果たしたとして、その漫画家さんがその場においては楽になるかもしれませんが、つまるところは、総額の決まっている予算から削りだしたお金なので、誰かに、どこかに、ツケが回るわけです。

大きなくくりとして、
「原稿料で漫画の制作費はまかないきれない」
という状況は、このままではどこまで行っても変わらない、というのが、
佐藤さんが具体的な数字を出してまで、多くの人に伝えたかったはずのことです。

こうした状況をなんとかしたいと考えて、そのために動き始めるべきかどうかは別にしても、これから漫画家になろう、漫画を描いて生活して行こうと考える方は、現状の雑誌や原稿料や制作費の状況は踏まえていただきたいです。

その状況のなかで、どうやって、自分の漫画制作の環境を確保し、漫画を描き続けるかということは、しっかりと考える必要があります。

ですので、対策として、せめて、
「100万からのお金が絶対に必要なので、貯めてください。用立ててください」
と申し上げるしかないのです。



      3 誰も 「原稿料だけではやっていけない」と教えてくれなかった

それにしても。
それにしても、です。
「プロの漫画家」が、原稿料だけでは制作活動がままならないなどとは、プロになるまで、本当に誰も教えてくれませんでした。
「それはおかしいんじゃないか」と、考えること、口にすることもはばかられる空気が、編集者や出版社との間にはあります。

お金のことや、そして契約のことを互いにきちんと口に出来ないような空気が、不明瞭な領域を、触れてはいけないことのように思わせ、ここまで来てしまったのです。

漫画家の側も、この事実に関して、本当は自分の意見をハッキリさせるべきです。
声高に表明するかしないかは別にして。
そして、出版社も同じく、この構造的な問題に、意見表明をするべきです。

ベテラン新人問わず、漫画家さんが、
そして出版社、編集部、編集者が、
「能書きはいいから、才能と根性で単行本を売って、そのお金を作家としての経営に充てて、原稿料では足りない、などという事実に執着するな。つまるところ、こうした根性論で残る漫画家の作品だけが、生み出されていけば良いのだ」
という立場をとられるなら、特に申し上げることもありません。

この問題で苦しんでいる人の立場が回収されないだけのことです。

自分は、この問題には、漫画家の創作環境の厳しさだけでなく、漫画雑誌の赤字の苦しさ、出版社の経営の苦しさが切り離せない問題として存在していて、つまるところ漫画にとって、たいへんな問題だと考えるので、表明しています。

この問題によって、大企業である出版社も、大企業であるゆえに苦しいのですが、
漫画家つまり、ひとりきりの個人には、より一層、よほどの知恵やタフさがないと、対処の難しい大問題です。

そしてこの部分に関しては、感情的にならずにつづることが難しいです。

特に、とりわけ新人の頃に、お金に関して苦しい瞬間に、例えば担当編集者に、
「そんなことで悩んでないで、いいから頑張って描けばいいんだよ。単行本が出れば印税が入るでしょ?」
「原稿料をちゃんと出しているんだから、なんとかやりくり出来るでしょ?」
という種類のことを言われて、みじめな思いをしないでいることは難しいはずです。
そうしたことを言ってくる相手は、ほとんどの場合、日本の中でも高水準の月給を大企業からもらっている会社員です。
お金に対する感覚が、まったく違うのです。
そうした相手に、仮に、
「原稿料が1枚いくらとしてですね、そこから、アシスタントさんにギリギリこれだけのお金を払わなければならず、食費がこれくらい、家賃がこれくらい、そうするともう、自分のお金はなくて・・・」
と伝えなければならないとしたら、みじめさもひとしおです。

「お金の話で恐縮ですが・・・」と、切り出したくはないのです。

貧すれば、卑屈になりそうになり、プライドや自意識や、そうしたこととの健全なココロのバランスを保つことは、たいへん難しくなります。

せめて、この話は本当は、相手の会社の、決裁権のある人、経営者、そうした人と話が出来なければいけないはずです。
こちらは、ひとりで経済活動をしている経営者なので。
つまるところ、大企業対弱小企業、発注先と下請け、のような構造を脱せないことになります。

せめて、原稿料で経営を健全に回せるのならば、いつまでもこの問題に拘泥することもないはずなのですが、そのようなわけで、プロになるまで、誰も、
「原稿料では回していけない」
と、教えてくれなかったのです。

ちゃんと、聞けばよかったのかな?
誰か、聞けば、教えてくれたのでしょうか?


      4 「二次使用」で得られる(かもしれない)お金

連載がまとまっていくことで単行本になり、そこで発生する「単行本の印税」は、漫画作品の「二次使用」です。「著作物の二次的利用」と言われるもののことです。
「二次使用」とは、「創作された著作物が利益を生み出すように使用されること」です。

漫画の単行本は、これに当たります。映像化されたり、キャラクター商品が作られたりすることも、これにあたります。

ですので「単行本の印税」は、著作者が享受するはずの、著作という資産が生み出す「儲け」であるべきです。
その「儲け」のはずのお金を、原稿料ではまかないきれない「創作の制作費」に充てなければならない状況が多くあるのは、漫画の経済が構造的な問題を抱えているということです。

もちろん、そのようなわけで漫画家が厳しい状況にあるのと同じように、先述のように、漫画雑誌そのものも、赤字を抱え、厳しい状況です。

執筆作家全員に、制作費をまかなって余りある原稿料を渡す余裕などないほどに、漫画雑誌は赤字なのです。


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