漫画家本人の生活費食費、アシスタントスタッフの人件費食費、漫画家の仕事場の地代家賃や光熱費、画材代、細かい資料代、細かい取材費。
そうしたものは、通常は漫画家が負担します。
逆に、編集者の人件費食費、建て前上は漫画家接待つまり漫画家が一緒にいるはずのキャバクラ代その他の費用、打ち合わせの食費喫茶費、連載開始前の取材費資料代、連載中に認められる大きな取材費資料代、取材時のフォトグラファーさんの人件費、デザイナーさんへの報酬、製版さんはじめ原稿を印刷製本の版にするためのコスト。
そうしたものは、通常は編集者ひいては編集部ひいては出版社が負担します。
この、費用負担の分担は、通常、話し合いや同意があまりキチンとなされるものではありません。
「なんとなく決まる」「なんとなくそんなものかなと理解して決まる」といったところです。
漫画を作る仕組みが今後、大きく変わるとしたら、この、制作費の費用負担の問題が、大きな問題として出てきます。
アシスタント代つまり、スタッフさんの人件費は、本当に漫画家が払うべきものなのか?
そうしたことさえ、再検証が必要かもしれません。
例えばこういう実際の話があります。
編集部が紹介してくれたスタッフさんだとしても、報酬の支払いは漫画家がしている以上、雇用のやり取りは本来は漫画家とスタッフさんのことがらです。
が、編集者が、紹介してやったとでも思っているのか、月給の支払いで約束しているつもりのスタッフさんに勝手に連絡を取り、漫画家の承諾のないままに、他の作家さんへのヘルプの仕事をお願いしたりして、当の漫画家にはまったく断りもなし、ということが実際にあります。
そうしたことをする以上、例えば、アシスタントスタッフの人件費は、編集部つまり出版社が持ってくれてもいいのではないか、ということにもなります。
スタッフさんの人件費のコストを持ってくれるなら、制作費をまかなえる限りにおいて、原稿料と呼ばれるものの単価が安くなっても構わないとも言えます。
こうしたことだけではなく、「漫画の制作費」は、あいまいなことだらけな現状です。
そして、繰り返しているように、原稿料の名目で払われる漫画の制作費だけでは。漫画家は赤字です。
同じように、満足な原稿料を作家すべてに払っていては、漫画雑誌は、ますます赤字です。
制作費の定義があいまいな故に、様々な思惑の入る余地があり、それぞれの立場で認識が異なり、たくさんの誤解や見解の相違が生じるのです。
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