無題 いや、2018年5月の終わりに、「日本語人への手紙」に応えて

日本語人への手紙

ツイッターで、言葉を交わすことはしていなかったんですけど、ずっとこちらからはフォローしていて、その言葉を読ませてもらっていたガメどん(仮名) @gamayauber01 が、5月の終わりに上のようなタイトルのブログをアップしていて。
読んだら、「これは俺に宛てられた手紙でもあるようだから、あー、じゃあ、返答をせんといかんな」という気持ちになって、初めてリプライのノックをして、以下のような趣旨のことを連投したのでした。

僕の個人的な時節の事情もあるんだけど、ちょうど、ちょうど、「ちょっと、書き言葉のリハビリを始めても良いかな」と思い始めていたタイミングだったというのもあります。

読ませてもらったブログに書かれていた「日本と日本人のこと」に、ものっすごく大雑把に言い添えると、世界史のタイムスケール上での日本の重要性というか役割というのは確かにある。あった。
それは、この数百年くらいの「今」がその時で、たぶん、「この世界の、西と東の、橋になる」てのが日本が受け持つべき役割だったんですよね。
世界史のタイムスケール上での役割、というのは、ローマや北欧やモンゴルやスペインやアメリカ合衆国が、世界史の1000年スケールの中で負ってきた役割と同じような意味合いの役割のことね。

ヨーロッパに収まりきれなくなったヨーロッパが、ヨーロッパを離れ、(主にスペイン語と英語、それからフランス語、その他でもって)南北アメリカ大陸を征服して、大陸の西に辿り着いちゃったんで、蒸気船(黒いやつ)を作って太平洋を渡り、辿り着きたかったのがアジアで、それは1000年2000年単位の歴史の中で常に「東(アジアのことね)」からやってきた文明の波を受け止めつつの、その東へと進むんだけど東には阻まれつつ、では逆に西へ西へと進むことにした「西欧文明の進歩」だった。

1000年2000年前、自分たちの背後、東からやってきたアジア(≒中国≒モンゴル≧ジパング)の、その背後に今度は自分たちが西に進むことで地球をひと回りして、東から辿り着いてみたかった…というのが、ものっすごい簡単な、この2000年ほどの西欧史なのだと思います。

(その、海の向こうのアジアを遠くに見ながらの、ごく直近のアメリカの文化が、アメリカ西海岸の文化で、それがハリウッド映画でスターウォーズでヨーダ師匠で、スティーヴジョブズでアップルコンピュータだったわけです。)

(ルーカスやスピルバーグやジョブズが、アジア・日本をどのように評価してくれてきたかは、ここで列挙するヤボはしないでおく)

黒い蒸気船がアジア目指して太平洋を渡った先に、中国に辿り着く前に「日本」があったんですよ。
その、黒い船が日本に辿り着いた時代に、大国(大文明の中国と米国ほか≒アジアとヨーロッパ)同士が直接衝突すれば、産業革命以降、そしてほどなく人間の文明が核爆弾を手にするという歴史のタイミングの中では、人間世界そのものが滅びたかもしれない。

その、地球上の「東」と「西」の板挟みに、日本が位置している。
かつて大昔に中国の属国で、この数十年の今は米国の属国であることも含めて照らし直すと、世界史の大きなピリオドの重要な役割を、この国は担っているのではないかなあ…と思う。

でも、「なのに、今、この国は・・・」という話になる。

東と西の橋になる…という役割を担えるかどうか以前に、東と西の板挟みの圧力に耐えるどころか、自分たちの業の深さと自家中毒の自重で崩壊するかどうか、このまま歴史上のスポットライトから退場するんじゃないか…みたいなことになっているのは、ご覧のとおりです。

しかし、このまま歴史上のスポットライトから退場した時に、じゃあ例えばイタリア(ローマ)やギリシャやスペインのように、自分たちの過去の文化遺産で食べていくことができるのか?
せっかくの自分たちの遺産を、すでに壊し尽くしてしまっているように見えるこの国では、彼の国々のようにはいかないのではないか・・・という恐ればかりが残る。

紹介した冒頭のガメどんの文中に、「「見たくない現実は見ない」日本文明の伝統的な欠陥」という的確な指摘がある。
それを僕の言葉で言い直すと、「間違っていることがわかっていても、身内をかばう」ということに尽きる。
大きな組織のレベルでも、個人のレベルでも、その病理に冒されている。
それは、誰もが個人的に周囲を見回しても、あるいは今の私たちの国の政治行政とその代表者たちを見ても、明らかでしょう。

その病理に光を当て直さないなら、日本は世界史の重要な役割のスポットから外れて、そして、食べていくことができたはずの遺産も失ってしまって、ただこの可愛らしい形をした列島と、その平地に建てられた建築物だけが遺跡みたいに残って、消え去るのではないかな・・・と僕は想像する。

こんな風なことをツイッタで連投したら、ここでガメどんが、

「そうだとすると、(俺注/日本の病理は)日本の文明の最良の部分と表裏一体なんですね。」

という指摘をもらった。

僕は、そう思います。
もっとも美しいところと、もっとも醜いものが光と陰になって、日本の文化の陰影を作ってきた。
この先は、そのこと自体を意識の上に浮上させるかどうか。
浮上させれば「次」の次元があるかもしれない。
この「陰影」を、無意識下に沈めるままなら、ここまでだと思います。

組織やシステムは、つまり人間個人も、国家も、解放し過ぎれば乾燥して自壊するし、閉じて引きこもれば自らの湿度で腐食する。
ほんとうは小さな種やシステムや組織が散在して相互にフィードバックしてこその、世界の多様性なのだけど、数多くの絶滅危惧生物と同じように、日本は多様性を失って、フィードバックの機能を失って、システムとしての崩壊を迎えて、生き残りにくい可能性が増しているように見える。

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/その4 漫画家の定義

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~インターミッション~
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/その8 転んだ時にタダで起き上がっていては 死にます

/その9 ここでも嵐のように襲い来る、万能感と無力感

/その10 雑誌に掲載されていることをイメージする

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/その12 最初に雑誌に載る、いくつかのパターン そのことにどうしても言及したい いくつかも含めて

インターミッション 2
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インターミッション 3
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第10章 雑誌に1本載った ここから先に進む時の覚悟

/その1 まだ、本論の定義での「プロ」ではありません

/その2 ブログ 連絡手段の必須として


/その3 喜んで席を譲る連載作家はいません サバイバルだぜ

/その4 速く たくさん 描くことでしか手に入らないことがある

/その5 描きたいペース 描きたいスタイル


/その6 プロになって そののち10年後もプロでありたいかどうか

/その7 死守するものを定める


/その8 雑誌の枠内やジャンルの枠内で作風をつくってしまう危険について


第11章 プロになりたいと思う かどうか

/その1 自分の「名」で「生き死に」をしようと思うかどうか

/その2 「エンターテインメント」の、日本語訳 わかりますか?


/その3 読み手のために漫画に仕えることと それが自分のためであることの一致

/その4 不安なのは、みな、同じです


~インターミッション 4~

/その5 アシスタントについて またはプロ以前の時代について

/その6 “漫画家のアシスタント”は “不本意”だが“みじめ”ではない


/その7 付記 漫画家がアシスタントに手伝ってもらうということ


第12章 アシスタントの日々になすべきことについて

/その1 生きてその仕事場を出る


/その2 ものを考えましょう 人に自分を委ねてはならない

~インターミッション5 おすすめ文献 さらに~
/一冊目 「人体のしくみ」
/二冊目 「ブックデザイン」
/三冊目 「デザインの自然学」


/その3 いちど自分のいままでのスタイルがすべて崩れます ビックリしないように

/その4 モノとお金以外のすべてを盗む

/その5 漫画家さんの振る舞いの全ては参考になる とにかく学ぶ

/その6 他者の作品制作に全霊で仕え、力は使い切り、しかし疲れずに帰る

/その7 漫画/漫画雑誌をたくさん読む 好き嫌いや批判を脇において

/その8 仕事場で我を出さない 感情で仕事場の空気を揺らさない その仕事場の空気はタダじゃねえぞ

/その9 自分の不満の表明のためにふてくされてはならない

/その10 人の漫画の手伝いをして、漫画を描いた気にならないようにする

/その11 仕事の合間は「お休み」ではないです 漫画を描く 描く準備をする

/その12 月に2本以上ネームを描いてください

/その13 漫画家は、ホームを通過する特急電車 アシスタントはホームに立つ人

/その14「引き出しを増やす」のウソ 脳の「インプット」と「アウトプット」について

/その15 代案を出せて初めて「批判」と言える

/その16 否定の言葉でしゃべらない タメ息などつかない しゃべりすぎて気持ちよくなっちゃったらいけない

/その17 自分を大きく見せてもしかたない(尊大さのワナに気をつける)

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/その19 編集者/雑誌/読み手をバカにした時点で、バカは自分です

/その20 テレビが「表現媒体」ではなく「広告」であることについて

/その21 幸せそうな人を 「幸せそうでいいよね」と思う想像力の欠如と決別する

/その22 死なない程度に、たくさん恥をかき、傷付いていい

/その23 アシスタント時代に太ったりやせたり眠れなくなったり腰痛になったり 心や体を悪くしている場合ではないです

/その24 目くそ鼻くそ同士でギスギスしない

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/その26 アシスタント仲間を戦友にする 孤立してはならない

/その27 「プロのアシスタント」について

/その28 漫画家の重力 人の仕事場の引力

/その29 漫画家の寝首を掻く(ホントに殺しちゃダメだよ)

/その30 いま 「どうぞ連載を」と言われたら 自分自身のようなスタッフに手伝ってもらって 月に1本 週に1本 漫画原稿を仕上げられますか?

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