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一色登希彦 ブログ / 三重県の小さな町に在住 現在は飲食店に従事 漫画描いてました

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「宮崎さんあの、絵コンテのほうは・・・?」 キミは無能な編集者か!? 

「ポニョはこうして生まれた。 ~宮崎駿の思考過程~ 」をようやく見終えました。「崖の上のポニョ」のメイキング/ドキュメンタリーです。

長かった。トータル12時間以上。

必見にして駄作。



宮崎駿さんの仕事を見ることができる、という点において素晴らしいのですが、ドキュメンタリーとしては質を語れないレベルでした。

聞き役も兼ねるディレクターさんの存在がものすごく邪魔だ、という、希有な出来になっています。


このディレクターさんは、NHKの方のようで、「プロフェッショナル 仕事の流儀」の宮崎さんの回を担当していたようです。

その番組の出来が、制作者が想定したストーリーに無理矢理引き寄せたような酷い出来でした。今回の「ポニョはこうして生まれた。」が、同じ取材ソースを元にしていることは漏れ聞いていましたが、まさか単体発売のドキュメントならば同じ目にも遭うまい、と高をくくっていたら、同じ目に遭ってビックリしました。

僕は別にNHK礼賛者のつもりはないけれど、(かつての?)NHKのドキュメンタリーとかノンフィクションの質の高さが心に残っているものとして、惨憺たる質の低さに驚きました。

ディレクターさんの資質が、「ディレクター」を名乗って良いレベルに達していない。なんでこの人が「ディレクター」を名乗れているのか? 本人を責めたい気持ちはありません。なぜ、周囲の人間がこのレベルの人を「ディレクター」と認めて許してしまったのか? 「ちょっと待て!」という人がいなかったのか? 

ディレクターさんの、質問も、受け答えも、対象との向き合い方も、自問自答の仕方も、未熟で幼稚です。仕事のスキルの向上に責任を負うべき周りの人間が、何も教えずに野に放ってしまったとしか思えません。

(あ。改めて見たら、「ディレクター」のクレジットではないですね。でもこれは仕事としては「ディレクター」以外の何でもないでしょう)

毎日毎日、「宮崎さんあの・・・絵コンテのほうは出来ましたか・・・?」なんて問いかける、それしか問いかけられない。(こんなの、追いつめられている漫画家に1時間ごとに「ネームのほうは出来ましたか?」と電話することしか思いつかない編集者みたいなものだ)

絵コンテが出来ていなくても、その周囲でいくらでも奇跡が起きていることに気がつかない。

「絵コンテが出来上がる」というストーリーしか期待していないから、それしか見ようとしない。それしか追おうとしない。どんどん、自分の期待したものしか見えなくなってくる。

このディレクターさんは、上司とかに、
「絵コンテが出来上がるのを追うことが、映画のドキュメントの神髄だ」とか、
「それが撮れないようなら、お前はディレクター失格だ。撮れるまで帰ってくるな」
とでも言われて、超びびりながら取材にやって来たのでしょうか? そうでないなら、なぜ、「アニメのことをまったく知らない」と言っておきながら、「絵コンテの完成」が最大の重大事であると分かっているかのように固執しているのでしょうか?

直接話法しか出来ない。

オウム返ししか出来ない。

「近寄るな。遠くに行け」と言われてホントに正直に遠くに行くだけで、「明日は、そのままの距離で存在感を消してみよう」とは考えてみることが出来ない。

ただカメラを回し続けてさえいれば、核心にたどり着くだろうと思っている姿勢。
自分自身が変化したり進化したりしなければいけない。「目の前の難問は、これは自分の問題なのだ」と思えていない。「相手の大変な問題なのだ(ろう)」という認識からついに出て来ない。

ちゃんと仕事をしていれば、世界は狭くなって来てくれるものだと思うのです。能力の多少はあっても、とにかく懸命に仕事をしていれば、世界に対する理解も増し、異なるジャンル、身も知らぬジャンルの人の仕事に対する想像力とか理解も深まるものだと思っていました。
ところが、このディレクターさんにはそうした想像力と理解が根本的に欠如したままだった。最後まで。

「無知を自分の武器にすること」と「無礼」がいっしょくたになっている。なんで誰も注意してあげなかったんだろう?

そして、「僕は・・・」「僕は・・・」とナレーションを繰り返していたディレクターさんは、最後まで変化も成長もしたようには見えなかった。

少なくとも、そのように見える、思える映像作品になってしまっている。

なんで、過去に何本も映画を完成させている作家に向かって、「間に合うんですか?」とか連発するのでしょう? キャリアの無い新人の漫画家の連載第1回目をケアしてるのならわかるけど。

「出来ましたか? 出来ましたか?」としか聞くことが出来ない編集者のさまを思い出します。編集者(とか近い周囲の人が)が、休む間もなく「描けるんですか? 間に合うんですか?」とか聞いて来たら、ダメでしょ? 描けるものも描けなくなっちゃうでしょ。

なぜ、自分が期待する物語に、どうしても目の前のものごとを寄せて行こうとするのか? 同じNHKがらみで思い出すのは、漫画家の唐沢なをきさんがNHKの番組取材があまりにも不愉快で、途中で取材拒否をして、番組が放送中止になったという出来事です。

出来る人はもう、どこにもいなくなってしまったのか? 

架空の物語にものごとを寄せるのは、物語作家が行えばよろしい。ドキュメント/ノンフィクションが「客観」であるというのは大ウソだけれど、手がける人は、物語作家とは異なる物語づくりの手法をひねり出さなければならない。

この「作品」の出来のひどさは、ひとりのディレクターの人間性の問題ではなく(それもあるかもしれないけどわからん)、仕事のスキルをきちんと叩き込まれて身に付けて現場にやって来ているか、それが出来るような人間に周りのオトナが育てたか、という問題だと思います。

NHKのオトナや、あと、「プロデューサー」に名が載っている鈴木敏夫さんや、そういったオトナたちは、「この子」が世に出して恥ずかしくない作品を作り上げられるかどうかに、最後まで責任を負っていないのではないだろうか?

映像作品も漫画も、その出来不出来の責任は、現実には「監督」や「漫画家」ひとりの責任で片付くものではないと思います。

「ゲド戦記」という駄作が世に生み出されてしまったのは、監督をした宮崎吾朗さんだけの責任ではなく、この人を監督に据えてしまったオトナの責任です。この映画に同じようにプロデューサーとして名が載っている鈴木敏夫さんは、本当にプロデューサーとしての責任が取れているのでしょうか?

鈴木さんの書かれるものや話すことを見聞きすると、「人間に興味を持つ才能のある人なんだなあ」と感じます。見聞きする限り、ご本人も楽しい人だし。「こいつ面白いからやらせてみよう」が、そのまま「面白いものになるだろう」という思いに直結してしまっているのではなかろうか?

その選び方で無事に面白いのは、そんなことと関係なく才能と力量のある宮崎駿さんの作品だけで、それ以外の「ジブリ包装紙」で包まれた駄作をつかまされるんじゃ、たまったものではないなあ。

つかまされる方が悪いのか?

どこもかしこも後継者不足・人材不足、育てる必要性とノウハウの欠如にまみれておるのだろうか?

それでも見るべき所があると思うのは、宮崎駿さんの「創作の姿」を見ることが出来るからです。ただ、それならば、別の項でもおすすめした、「もののけ姫」のメイキングの質の高さと雲泥の差があります。



これは相変わらずおすすめしたいです。

仮に、「宮崎駿さんには、誰が密着したって難しいことになるでしょ?」という意見があるとしたら、こちらを見ればそうではないことは分かります。やはり、「取材する人間の仕事の質」の問題です。

「「もののけ姫」はこうして生まれた。」を見て、面白かった方だけが、「もっと宮崎駿さんの仕事の仕方を見てみたい。考えを聞いてみたい」というとき、条件付きで(取材者の仕事の質の悪さを我慢して)今回の「ポニョ」のメイキングを見るというのなら、おすすめしたいと思います。

なにしろ、例えば庵野秀明さんが、「宮さんの仕事の仕方を目の前で見れたのは良かった」と言う、その人です。いまさら同じように宮崎さんから直接見聞きして学べる人は少ないわけで、でも、ものつくる人にとっては、有用な考えが満載で語られています。

聞いているこちらが同じように出来るか出来ないかは別にして、仕事の考え方や進め方の話にしても、「わかる!わかります!がんばりますよ」と返事したくなる話ばかりなのです。

さんざんうなずけたその直後に、ディレクターさんの、「はあ・・・」「そうですか・・・」という眠いリアクションに脱力させられることを我慢出来さえすれば。

お金出して買ったから、思いを述べてもよかろう。と今回は勢い余った。

こういう人を眠りから覚めさせられないままで戦場に放り込んでしまった、周りのオトナが責任を取って下さいよ。

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