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一色登希彦 ブログ / 三重県の小さな町に在住 現在は飲食店に従事 漫画描いてました

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「漫画家のなり方」57

第12章 アシスタントの日々になすべきことについて

   その14「引き出しを増やす」のウソ 脳の「インプット」と「アウトプット」について

趣味多く、色々なものを見に行き、聞きに行き、集め、色々なことをしている人が言う、「引き出しを増やす」という言葉がありますが、真っ当に見えて、180度反対のウソが含まれています。

それらを、漫画を描くことの「刺激」という「インプット」だと思っているなら、そこにワナがあることに気付いて下さい。


そうした消費的趣味は、「インプット」ではなく、脳の「アウトプット」です。
ですので、インプットだと思って、例えば映画を観たりすると、脳が気持ちよくアウトプットをしてしまい、大切な漫画のことを考える時にはもう、疲れてしまっています。
付け加えると、漫画を描くことは、行き着けば、脳の「アウトプット」ではなく、脳への「インプット」だと考えた方がよいものです。

その「事実」に気付かないまま、自分を「豊か」にしているのだと思って、「引き出しを増やす」「知識を増やす」作業にいそしんでいると、脳はその作業中ずうっと「出力=アウトプット」を続け、ひたすら満足し続けます。
作り手として「豊か」になるのでなく、いい感じでお金を使って下さる「お客さん」として自分が形作られてゆくことになります。
「口数と知識量ばかりは多いのに、なぜか漫画を描かない、描く漫画がつまらない」という謎の「自称漫画家志望者」が発生してしまう、不思議のメカニズムは、こうしたことによります。

漫画を描く以外のことで気晴らしをしてしまったら、漫画を描くわけがない。
むしろ、漫画を描くことで、「漫画をうまく描けないことの気晴らしをする」という循環を作り上げないと、いつまでも漫画を描くことが身に付きません。

漫画を描くことが大変な点は、良質の「インプット」に値するだけの作品を、脳の別の場所で自分で漫画を生産つまりアウトプットしつつ、自分にその漫画を読ませるつまりインプットさせ、その自分の漫画での読書印象をまたアウトプットする、という具合に、脳への情報の「循環」を自作の漫画で最大限に気持ちよく行わなければならないことにあります。
これは大変です。
なぜなら、自分の描く漫画だけでその循環を行うためには、その自分の漫画が既存の漫画より退屈なものであると、うまくいかないのですから。
小金を払って、他の誰かが作った、もっと面白いものを享受して、脳を楽しませた方が手っ取り早いのですから。

そうした理由で、漫画家にとって、ある意味で、他者の作ったモノが、自分の作ったモノより面白い、などということがあってはならないのです。自分の作ったモノよりも面白いモノがあるのなら、自分でモノを作る必要もないし、作ることも出来ないはずなのです。

自分の作ったモノがいちばん面白い、と思えるのならば、ある時点からは、本当はそんなに多く、知識を溜め込んだり、いろんなモノを見たり聞いたり集めたり、は、必要ないはずです。

面白い漫画を描くための、取材としての「知識」の蓄積は必要ですが、そうではない、「引き出しを増やさなきゃ」的「知識」や「経験」をかき集める作業は、本当は食欲とは別の要因によるストレス食いで無意味に太って行くのと同じ、無自覚で破滅的な、危険なことです。

「引き出しを増やす」的ウソにはまり、情報や知識やモノ集めに拘泥することは、漫画家になることとは正反対の精神活動です。


みなさん、本論でご紹介したたくさんの文献を入手して下さるのはたいへん嬉しいことですが、手に入れたあと、ちゃんと読んで、血肉になっていますか?
手に入れただけで、満足してしまっているようなら、買わないで渇いたままの方がマシですよ。
ご紹介したものは、「本当に身につければ、絶対に漫画に役立つ」という自信をもっておすすめしていますが、その、おすすめの言葉の甘さに安心されて、入手しておしまい、となっていたら、それは、ここまでに読んでいただいた文章も、その程度にしか身に付いていないだろうと思って下さい。

趣味で読まれるなら何も問題はありませんが、「漫画家になりたい」と思って読んでいらっしゃるようでしたら、「買っておしまい」「読んでおしまい」ということをしているだけなら、むしろこの長文も、読み手を頭でっかちにさせているだけ、という、よろしくない影響しか残しません。

ちゃんと、噛み砕いて、実践して、自分の「モノ」にするばかりでなく、自分の血肉にして下さい。


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| 長期シリーズ/「漫画家のなり方」 | 08:33 | comments(-) | trackbacks:1 | TOP↑

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一色登希彦先生ブログより「漫画家になるために」

こらあかんだろ正直! 「描きたいことはあるのに」と言ってる場合じゃないだろ。 と思っているときに,ツイッター経由で知ったのが 『ダービージョッキー』(武豊騎手原作),『日本沈没』等の 作品で知られる漫画家の一色登希彦(いしき・ときひこ)先生のブログ。

| 萌えろ!高校生物I・II | 2010/03/21 16:27 |

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